ぎて、どっかの畑でキャベジが腐ったというようなもんじゃない。五ヵ年計画によって階級闘争が激化された。その結果だ。問題の本質は、ジャガ薯《いも》には無え。富農とその手先の計画的奸策にあるんだ」
蹲んで所持品棚の樺の戸へよっかかっているのが、下を向いて煙草を巻きはじめた。
瞬間、同じようにきき飽きた、熱している喋りてとハグれた気分がスーッとみんなの間に流れるのが、信吉に感じられた。
ヤーシャは、それに拘泥せず巧に「プラウダ」の文句を引用しながらみんなに、富農が作物を出し渋ってること、運輸状態が円滑に行われていないこと等を説明した。
「タワーリシチ、兄弟! われわれは一九二八年の官僚主義撲滅のとき、どんな光輝ある活動をしたか! 覚えてるか? みんな! チョビ髯の工場委員会書記が、どんなザマしてオッ払われたか、覚えてるか?」
笑いが、あっちこっちに起った。みんなは、そのときのことを思い出したんだ。
「ソヴェトのプロレタリアートが、階級的自発性で動き出すときが、今またわれわれの前に来ている。空の籠下げて、無気力な婆さんみたいに列に立ってばかりいるときじゃない。闘わなくちゃならねえ! 大衆的に、ボリシェビキ的に置かれてる情勢を批判しなけりゃならないときなんだ!」
「そうだ!」
「その通り!」
「タワーリシチ!」
肩で人垣をわけながら、大きな髭をもった男がテーブルのわきへ出て来た。
「俺は、第二交代だ。ひと言云わしてくれ」
手の甲で口の端を一ふきし、変に顔を外方へ向けるような反抗的な姿勢で云い出した。
「兄弟! 俺はこういう疑問をもってるんだ。長いこともってるんだ。われわれ生産に従事する労働者に食糧が足りねえとき、何故国家保安部の消費組合だけはフンダンに物をもってるのか?
何故外国人だけ、特別の切符でしこたまものを食うことが許されてるのか?――俺はこれに答えて貰いてんだ!」
労働通信員グーロフは、額のとこへ太い青筋を浮き上らし、盛に左の手の爪をかみながらテーブルへ腹を押しつけ紙切に何か書きつけてる。
アクリーナが、窓枠へ腰かけ両手をつっぱったまま叫んだ。
「私は労働婦人として云うんだけれど、全くこの頃の消費組合ったらなっちゃいやしない! きのう塩漬キャベジを百グラム買うのに、何分列に立たせられたと思う? レーニンは女を台所から解放しろと云った。レーニンが死んで何
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