さえやっちまえばひとりでに消えるもんだろうぐらいに考えて放っておくのは、まるで非階級的な日和見主義だということが、よく分ったと思うんだ。
 一旦、ソヴェト権力確立のために必要となれば、われわれは悦んで餓えにだって耐えて見せる! 国内戦の時代、それをやって来たんだ。
 だが、われわれ、〔三字伏字〕プロレタリアートから一片のパンだって、階級の敵[#「敵」に「×」の傍記]が奪おうとして見ろ。許さねえ! 闘わなくちゃならん! ただパンのためじゃねえ。――階級のために、ボリシェビキは闘おうと云うんだ!」
 ウラーアアアア……
 ウラーアアアア
 煙草の煙と西日とに梳かれた暑い空気がみんなの頭の上で一斉に耀《かがや》き、震えた。
「さア、タワーリシチ! ところで誰が突撃隊になるか? 手上げて見てくれ!」
 軈《やが》てみんな一緒に笑い出しながら、信吉も自分の手を下した。
 そのときまで、手なんぞ上げそうにもなかったアクリーナまで、力んだ顔して窓枠の上から右手を突出してやがる! ハッハッハ!
「そうみんないっときんなっちゃ、職場が困らァ」
 みんなは、夙《とう》から考えてた計画が計らず実現したというような気の入れかたで、相談はじめた。
「鋤」工場の、消費組合監督突撃隊へは、全職場総動員。――異議なし!
 各部一交代から大体十人ぐらいずつ一組に分け、一ヵ月で交代すること。
 当面の任務は、区の消費組合委員と協力して消費組合の内部、運輸状態、生産組合と線を辿って、生産品配給を研究、統制すること。及、突撃隊の一部は他の工場へ出かけ、そこの自発性を刺戟し、そこで消費組合監督突撃隊を組織させ、連絡をもって益々大衆的に活動すること。
 消費組合加入勧誘。
 壁新聞、工場新聞を、積極的にこの問題に利用すること。
 旋盤第三交代からはヤーシャ、ボリス、グーロフ、アーニャ、その他が指名され、グルズスキーの名が出たとき、信吉は、なるほどナと思った。陰でブツクサ云ってるようなものは、表へ出して、働かして見ればいいんだ。知らなかったことも知るようになるんだ。ボリシェビキ教育だ。
 が、アーニャが、
「私は特別に、シンキーチを、第一の組へ入れたいと思います」
とみんなの前で云ったには、面くらって、
「俺あ……」
 タジタジとした。
「シンキーチは、われわれの自発性に貢献したんです。『赤いローザ』に女代議員
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