がうまく行ってねえんだ!」
「政府だって、うまく管理してるとは云えねえ」
「タワーリシチ!」
 信吉は、思わず目と耳とをひったてた。オーリャだ!
「タワーリシチ。マルーシャは確にわれわれに一つのいい実例を話してくれた。けれども、われわれ〔三字伏字〕プロレタリアートはそれですぐ、今誰かが呻ったように、政府の管理がどうこうっていうことは云えないと思うんです。何故富農やその手先が、作物の活溌な流通を妨げるのか? 奴等の利益のために農村と都会の労働者との一致を妨げ、イガミ合いをさせようとしてるんです。奴等は、ソヴェトを狙う資本主義国のブルジュアどもと同じだ! 自分たちのブルジュア根性で、ソヴェト政府とソヴェト大衆との関係を考える! 食糧配給を混乱させれば、ソヴェト大衆は不平をもちはじめ、ブルジュア国で労働者が搾取者に〔二字伏字〕する通りに、自分のソヴェト権力に向って反抗するだろうと、それを待ってるんです!
 五ヵ年計画を、万ガ[#「ガ」は下付き小文字]一にも投げちゃうかも知れない。そう思って待ってるんです。われわれは、奴等の期待に添うだろうか?
 いいや! 絶対に※[#感嘆符二つ、1−8−75]
 われわれは『十月』をひと[#「ひと」に傍点]のためにしたんじゃない! ソヴェト権力は[#「ソヴェト権力は」に傍点]、われわれのもの[#「われわれのもの」に傍点]なんです!」
 轟く拍手が湧き起った。
 熱誠をこめたオーリャの言葉は、時間を忘れさせた。
「タワーリシチ! どうしてわれわれが自身の政府を助けるのをイヤがるようなことがあるでしょう※[#疑問符感嘆符、1−8−77] 政府がわれわれを助けるんじゃない。われわれがソヴェト政府を助けるんです。プロレタリアートのあらゆる智慧と忍耐と、何より大切な階級的自発性で、レーニンの党、われわれの〔四字伏字〕共産党を助け社会主義を達成させなけりゃならないんです! ソヴェト同盟の成功を待ち望んでいる〔十一字伏字〕のためにそうしなければならないんです!」
 まじり気ない、灼きつく歓喜の拍手に送られて、オーリャは信吉が突立っている隅へ引こんで来た。
 オーリャは信吉がそこにいることに気づかない。然し、信吉は見た。オーリャの細そりした、力のある指がハンケチをからめて顔の汗を拭きながら亢奮のために微に震えているのを。

        五

 三十分
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