を伴って組織し直さるべきもの、再出発をするべきものというのが「脱出の文学」の主張するところであるらしい。そして「灰色の道」という小説をフィリッポ・サツキという作家が書いており、その作品もイタリー文壇の今日の「脱出」の要求に応えたものであるという紹介がされている。
「リビヤ白騎隊」は映画に於ける最初の「脱出」の映画として登場したものであるそうである。ムッソリーニ賞が与えられたということの社会的背景がこれらの事情によってやや理解されるのである。
イタリーの作家達がこの数年来置かれていた社会的事情を考えると、今日「脱出」の欲求が広汎に生じていることもうなずける。だがこの「脱出」への要求の一番の根源には何から脱出したいという感情が横たわっているのであろうか。そして、果して現在方向づけられているようにアフリカへ向って、リビヤへ向って、エチオピヤへ向って土着種族から生活権を奪うことが、イタリーの文化人にとって最も望ましい唯一の脱出の道と考えられているのであろうか。私どもに考えさせる少からぬものがここに含まれている。
フランス人にとってアフリカは貴重な天然資源の植民地であると同時に、十九世紀の初
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