ことは、その関係が直接的なものとしては表にあらわれないということ」である。「キャナライゼーションとデモクラシーとの関係はアメリカにとって一つの難問だと思います」
 これはなかなか意味の深い点で、文化の問題として客観的にみるとある意味ではパール・バックその人がどこまでこの高度資本主義的な階級心理から自由であるかということも考えられてきます。他の三人の婦人たちの善意とまじめさにみちた返事についても、ここにまた新しく生れる発展のモメントがひそめられているとも思えます。
 キャナライゼーションの社会的な方法としてマス・コムュニケーションの問題もある。ラジオ、新聞、映画、広告宣伝の集団的心理コムュニケーションによって個々の独立の判断はその大波にのまれてしまう危険が注目されてきています。日本にきた教育使節団の人々が、アメリカの子供が漫画でどんなに毒されているかということについてふれていました。それから学習そのものを楽にたのしんでさせようという程度がすぎて、自立的な児童の探求心がのばされるよりもさきにあんまりたやすく解決が与えられすぎるということにもふれていました。学校教育の方式の中に当然入りこんできているキャナライゼーションとマス・コムュニケーションのプラスとマイナスの面を研究する必要があります。アメリカの文化がより幸福なものとなるためにはやっぱりこの点を検討してみなければならないでしょう。[#地付き]〔一九四九年十一月〕



底本:「宮本百合子全集 第十六巻」新日本出版社
   1980(昭和55)年6月20日初版発行
   1986(昭和61)年3月20日第4刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第十二巻」河出書房
   1952(昭和27)年1月発行
初出:「津田塾大学新聞」
   1949(昭和24)年11月20日号
入力:柴田卓治
校正:磐余彦
2003年9月14日作成
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