ウン? これがスモーリヌイ? うちの父ちゃんどこにいるのさ」すると、兄らしいのが、ちょっときまり悪そうに、答えている、「父ちゃんは、ここにはいないよ」ソヴェト同盟未来の労働者なかなか承知しない。「だって、ここボリシェヴィキの家だろう? 父ちゃんボリシェヴィキだもの、いるだろう、ここに」
一たん階下に降りて帝政時代の政治犯人が、檻禁されていた牢屋の模型を見物する。
模型といっても、本物の牢屋の鉄格子、腰かけ、みんなもとの牢屋からとって来たものだ。ほんの一坪位の厚い壁の間に、ボンヤリ、ローソクの光に照らされながら髪の伸びたやつれた革命の同志が、それでも小机に向って本をよんでいる。足を見ろ、足枷だ。寝床を見ろ、木の寝床だ。帝政時代の支配者は、こういうところへ、一年や二年、尊い解放運動の犠牲者を押しこめていたばかりじゃない、十五年、二十年とつまり一生を、閉じこめた。
だが、大衆の力、革命的労働組合の偉力、正しい指導党の力は、どんな厚い壁も、重い鎖でも、押しこめて置くことは出来ない。
再び、二階へ上ってソヴェト同盟の建設を巨大な電気仕掛の模型で、示した処を見ると、万歳! がこみあげて来る。
どうだ、プロレタリアートと農民は、遂に勝った。暗かった、シベリアの山奥に新しい炭鉱区を開拓したのは、誰か、大衆のソヴェト権力だ。暗礁だらけのドネープル河を八一〇、〇〇〇馬力の世界最大の発電所と変えたのは誰だ、これもソヴェト同盟のプロレタリアと農民だ!
中国ソヴェト建設のために、射殺され、首をつられた中国同志の写真も少からず飾られている。ポーランドの暴圧に抗する大衆の写真もある。
革命博物館は今こそ、主としてロシアの革命史を、材料としているが、今にここに世界プロレタリアートの解放の輝かしい歴史が、飾られる日が遠くないのだ。[#地付き]〔一九三一年十一月〕
底本:「宮本百合子全集 第九巻」新日本出版社
1980(昭和55)年9月20日初版発行
1986(昭和61)年3月20日第4刷発行
底本の親本「宮本百合子全集 第六巻」河出書房
1952(昭和27)年12月発行
初出:「戦旗」
1931(昭和6)年11月7日ロシア革命記念特別号
入力:柴田卓治
校正:米田進
2002年10月28日作成
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