はヨーロッパ戦争前の賃銀の平均三倍の賃銀を貰っている。
ソヴェト同盟の全農戸の半分が集団農場に組織された。
集団農場で働く農民の収入は、個人耕作をやる農民の年収の倍、或は三倍だ。それはそうだろう。第一税がひどくやすい。集団農場を組織して三年間は無税だ。種代、農具代は、政府の補助がある。集団農場員が冬を越すに必要な薪を伐り出す森林はタダで国家からもらう。集団農場員の家族は、年寄、子供で働けない者でも、集団農場が養って食わしてくれるのだ。何と安心だろう!
しかも、集団農場にはグングン無料託児所や、共同食堂、クラブなどが出来ている。
クラブは、都会の労働者クラブと同じだ。そこでいろいろ勉強が出来る。音楽サークル、文学サークル、演劇サークル、赤色救援会の組織などがある。五ヵ年計画でキネマ館が一万五千三百軒から八万七百軒にふえる。ラジオは四百万人が聴くようになる。
実際、ソヴェト同盟は働く者の国だ! 芝居、音楽会、キネマなんかを見るのに、労働組合員は半額だ。
毎年盛んなメー・デーのデモが行われるが、翌日五月二日の祭りには、あらゆる興行物が無代でスッカリ勤労大衆のために解放されるのだ。
そして丈夫に
医業国営=誰でも無料で診察をうけ、入院出来るようにというのがソヴェト同盟の理想だ。
集団農場、工場は診療所をもっている。傷害保険、養老保険は、手前の賃銀からサッ引かれることはない。国家が負担する。一年一ヵ月ずつ給料つきの休暇を貰って、「休みの家」へ休みに行く。昔の美しい離宮、ブルジョアの大別荘が、今は楽しい勤労大衆の休み場所になっている。
[#地付き]〔一九三一年十一月〕
底本:「宮本百合子全集 第九巻」新日本出版社
1980(昭和55)年9月20日初版発行
1986(昭和61)年3月20日第4刷発行
底本の親本「宮本百合子全集 第六巻」河出書房
1952(昭和27)年12月発行
初出:「文学新聞」
1931(昭和6)年11月10日特別記念号
入力:柴田卓治
校正:米田進
2002年10月28日作成
青空文庫作成ファイル:
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