。――お前は?」
「我々は見学だヨ。スターリングラードの耕作トラクトル工場見学に行って、ずうっとドンの炭山まで視察だ」
 見学団も各工場から出る。新しいソヴェトがどんないい工場を持ってるか、集団農場、国営農場はどんなにやっているか、都会の工場からの代表が一大隊繰り出すのにもよく出逢う。
 父親や兄が職場からそうして珍らしいところを見学しながら休む時、子供連は、ではどうしてるか?
 区の林間学校とピオニェールの夏の野営というものが、ちゃんと子供のために手をひろげて待っている。
 親の給料の額によって、有料、無料。とり扱いは全く同一だ。五六十人から五六百人までの男の子、女の子、プロレタリアート闘士の交代者たちが、景色のいい林の間、森や野の中で、これも一ヵ月、勉強し、遊び、働いて来るのだ。
 だから実に晴れ晴れとして希望にみちた会話がソヴェトの夏の職場ではとり交わされる。
「おい、お前の休みはいつからだ」
「俺は八月にくれるように工場委員会へたのんで来たよ。女房の奴、『赤いローザ』にいるんだが八月にあっちは貰えるんだそうだ。一緒に貰いたいと思ってね」
「へえ、うまくやるね。俺んところじゃ、ま
前へ 次へ
全5ページ中4ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング