の書記長アヴェルバッハの挨拶で、簡単ながら熱心な歓迎の式がプラットフォームの上で始った。
国際革命作家書記局からベラ・イレシュが喋った。赤色陸海軍作家連盟からはポドソートスキーが挨拶した。
それに答え、ハンス・マルフヴィッツァとキッシュが、彼等の歓喜を述べ、やがて、音楽が鳴り出した。インターナショナルだ。ドイツからの作家達は、その時拳固を頭のたかさにあげ、革命的前衛の敬礼をしつつ、歌った。ドイツ語で歌った。ソヴェトの連中はロシア語だ。ドイツ語、ハンガリー語、英語、ロシア語。そこに集った革命的作家の国籍の数だけ言葉数があった。が、一つの瞬間、そういう言葉の差別は急に溶けて一かたまりの焔のような歌声に盛りあがった。それは、これらの人々が、
――インターナショナルとともに!
と歌ったときだった。
ハリコフに於けるこの国際革命作家大会には、松山という日本からのプロレタリア作家代表も出席した。(日本に関する決議は『ナップ』二月号所載)
「ラップ」は、国内のプロレタリア文学戦線強化のために、ソヴェト同盟内の各連邦におけるプロレタリア文学の運動の情勢に熱心な注意を向けはじめた。一九三一年度に、各連邦のプロレタリア文学を網羅する文学オリムピアーダの計画が発表された。
全ソヴェト作家協会からソヴェト芸術全般にわたって、新人紹介、その社会主義建設事業紹介の役割をもつ大文集が出版される計画だ。これは同時に、英、仏、独語で出版される。委員はアヴェルバッハ、アッセーエフ、ゾズーリャーなどだ。
プロレタリア文学への新しい部隊養成の目的で、「ラップ」は三一年の正月から、新しい文学雑誌発行をもくろんでいる。
ところで最近の『文学新聞』は、党とともにソヴェトのプロレタリア作家たちが、次代の交代者である子供たちへの本気な関心について報告している。五ヵ年計画は、文化的事業の第一として、学齢児童全国就学を実施しようとしている。ソヴェト全同盟内の子供が国庫負担で四ヵ年の教育を受けることになるのだ。
革命前、ロシアの民衆の大半が文盲であったころプロレタリアートは彼等の鎖と汗とのほかに、どんな文学をもっていただろう。火酒《ウォトカ》と教会と悲しい民謡があっただけだ。革命によって解放されたプロレタリアートが、一般に文化水準を高めて来たとき、はじめて、本ものの階級の文学をもつようになって来たのだ。未来
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