エルホリドより年もずっと上だが、モスクワ芸術座のリアリズムを確立させ、しかも「装甲列車」などでは着実な発展の可能を示していた。ソヴェト同盟の「人民芸術家」としてもう完成された演出家である。現在のスタニスラフスキーに動揺する要素や未知を感じてこの先彼がどうなろうかと、心配したりする者はソヴェトの観衆の中にまあないだろう。
メイエルホリドも、「人民芸術家《ナロードヌイ・アルチスト》」だ。ソヴェト同盟から、革命前及革命後の彼の演劇に対する探究的な努力に対して、その最高の称号を与えられた。が、メイエルホリドの場合では、この称号が彼の才能を一定の場所に繋ぎとめるどんな材料ともなっていない。
メイエルホリドの天分の豊かなこと。それはソヴェトの観衆が十分知りぬいているどころか、世界に知られている事実。常に研究的で、新しい試みに対して大胆であること。それも、例えば一九二一年から二八、九年までの仕事ぶりを見れば分る。メイエルホリドの特徴はこの点に集約されていると云える。
ところで、まだ誰にも、ハッキリ分らないことが一つある。それはソヴェトの五ヵ年計画と――刻々に前進する社会主義の社会の現実とメイエ
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