と同じかい?
 ――人民文化委員会の芸術部が、その年の予算の中から、劇場のためにはいくら金を使うかという予算をたてる。各劇場にその予算がわりあてられる。それでやって行くんだ。――余談だが、ソヴェトでは、全露作家団体連盟に対しても、作家の技術と生活改善のために人民文化委員会芸術部が巨額な補助予算をもっているよ。画家だって、社会組織が違うから昨今の日本みたいに大小ブルジョアが小遣緊縮しはじめたおかげで閉口するようなことはない。これも、やっぱり人民文化委員会が調整して、やって行く。
 ――いやに窮屈みたいじゃないか。計画。計画。それに、誰だったかやっぱりソヴェトへ行って来た人が云っていたよ、ソヴェトの映画でも芝居でも、宣伝ばっかりで面白くもなんともない。一つ二つ見りゃうんざりだって。大体、お前はソヴェトびいきすぎるよ。悪口を云ったためしがないじゃないか。本当のところを云えよ! つまらないかい? 事実。――
 ――そりゃ数のなかだもの、つまらないんだって、ばからしいのだってあるさ。功績ある共産党の中にだって一人一人見ればいやな奴がいるのと同じこった。
  だがね。つまらない、下らないというのもいろいろだよ。芸術的な技術が下手で、捕えた主題もヤワでつまらない。そりゃ本当につまらない。客観的につまらない。ところが、もう一つつまらないと云われる場合がある。それは、ソヴェト芸術のもっている明瞭な階級性を、観る者が理解しない場合か、意識の底でそれに反抗している場合にだ。ソヴェトはプロレタリア農民、知識労働者――つまり働く人民のソヴェト国家だ。プロレタリアを先頭として、真剣に社会主義社会の建設に向って努力している。あらゆる芸術は、自然こういう民衆の実生活を積極的に反映しているのだ。ソヴェトは世界の芸術史上に、全く新しい一頁を開いているのだ。
  従って、階級的にアカの他人であり、プロレタリアートが目標としているものとは反対な利害をもって生きている者に、ソヴェトの芝居が面白くない場合も万々あるだろう。面白くないのを通りこして、うなされちまうかもしれない。ハハハハ。そういう外国人たちは、第一国立オペラ舞踊劇場(昔の大劇場)でオペラばっかり見ているよ。「ローヘングリーン」や「カルメン」。「オニェーギン」「スペードの女王」「サドコ」はこわくないからね。
 ――ふーむ。そんな古典をやってるところ
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