者でも、ソヴェトの文化に真に価値ある功献をしたものは、こういう待遇をうけるのだ。
それにしても古くからの俳優と、МОСПС《エムオーエスペーエス》劇場、「劇場労働青年《トラム》」劇場の連中との違いは、全く歴史的相異だね。
はじめっから出来が違うんだから、МОСПС《エムオーエスペーエス》にしろ、「トラム」にしろ、俳優演劇労働者は、みんな本当に工場の職場で働いていた連中だ。大部分がコムソモールだ。「トラム」のグループなんかは日常生活まで共産制にしてやっている。ソヴェトには、劇場の標準形態とでもいうようなきめがある。工場や役所にあると同じ「赤い隅」「図書部」「討論」「研究会」定期的集会。それ等管理の委員制を各劇場はもっていなければならない。「研究会」は必ず専門の芸術的研究と並行して、政治教程《ポリト・グラーモタ》の勉強をやっているのだ。従って演技も古い連中とは違う。故小山内薫氏が革命十年記念祭にモスクワへ来て、いろんな芝居見て、結局役者の上手なのはモスクワ芸術座しかないと云ったという噂をきいた。或る意味では真実だ。しかし問題もあるんだ。
現代ソヴェト共産青年、若い農民、学生、労働者。男女にかかわらず彼等のもっている明るさや、ものを考える考えかたの新しい綜合的能力、たとえば芸術と社会との関係なんかについてもはっきりそれがわかるが――それにユーモア、テンポなどは、小劇場の「功績ある芸術家」総出でも表現出来ない空気だ。俳優としてのもちものが気分からしてちがうんだ。一九一九年第一回の芸術労働者大会がひらかれて賃銀標準がきめられた。芸術労働者組合として、産業組合連合へ加盟したのだ。一九二七年に賃銀割出しの方法をいろいろ改正し、それをいま実行している。
歌舞伎の内部のように、だから封建的な秘密給金制は当然ないわけだ。云わば、芸術労働者の俸給も、ソヴェトではパンと同じに国定相場で支払われているわけだ。
――じゃ勿論、最低賃銀というものも、はっきり規定されてるわけだね。悪くないな……それで、大体どの位の収入があるんだ?
――話したね、さっき。――各劇場は、めいめい割りあてられた予算をもっているって。ここでも、その予算が出て来る。ソヴェトの劇場はその予算額に応じて、凡《およ》そ五つのグループに分けられてる。グループ一で、一ヵ月二万ルーブリ以上の予算、労働賃銀支払基金を
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