ローガンが衛生教育の一つの定規になっている位だ。
             *
 共産青年団員は握手はしない。ピオニェルも握手しない。それで先ず第一に来ることは、恋愛の自由ということでも、家庭における婦人の地位の向上ということでも、要するに生産関係が変って、女が本当に生産の単位として社会の中に組織をもって現れて来ないうちは、何にも根本にはものにならないということがはっきりする。
 で恋愛は自由というけれども、公事ではないから、自分の私事問題だ。これが社会的に問題となって各自責任があるのは、女のもっている、或は男のもって居る社会人としての責任義務を通して社会一般の問題となって行くだけである。
 恋愛を其の日の事業として暮すというのであったら、それは社会人として第一に排撃される。
 クララ・ツェトキンの書いた「レーニンの想出」に、戦時共産主義時代に若い党員が恋愛の自由ということを感違いしていろいろの誤謬を起したことにレーニンが非常に心配して、今の若いものは恋愛というものは一つの生理的問題に過ぎないということを非常に誤解して、あんなに有望な青年達が娘のスカートを追っかけて行くようではと非常に心配して居た事を書いて居る。
 併しそういう点は今の若い人間はズット進歩して健全になって居り、それだけ社会状態が落付いて来たわけで、これはソヴェトが今再び建設時代に入って居るはっきりした証拠である。
[#地から1字上げ]〔一九三二年一月〕



底本:「宮本百合子全集 第三十巻」新日本出版社
   1986(昭和61)年3月20日初版発行
初出:「サラリーマン」
   1932(昭和7)年1月号
※「宮本百合子全集 第十一巻」(新日本出版社、2001年)を参照して、底本の脱字を補いました。
入力:柴田卓治
校正:土屋隆
2007年11月30日作成
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