康状態を改良して行こうという努力は非常なもので、母性保護研究所なんかへ行って見ると非常によく設備してある。
 それから例えば子供を生む時は産院へ無料で入れる。産院を出ると、お母さんと子供の住んでいる区の健康相談所があって、そこへ産院からその子供がどんな発育状態で生れたか、お母さんはどういう健康状態の下に乳を与えているかということ、性病の遺伝があるかないか、そういうことを記入した子供と母親とのカードが健康相談所へ廻る。そうして無料で子供の健康診断を一月一度やってくれる。或る程度に子供が育つまで……若し子供の体に異状があったり、お母さんの体に異状があったりすると、健康相談所から病院へ報告してくれて、無料で病気を直してもらえる。ソヴェトの保健省は全国民を無料で医療させるということを目標にしている。農村の方の衛生準備はどうしても遅れていて、今度五ヵ年計画で診療所を非常に殖やすということで、医者を地方に派遣する新しい規定とか、いろいろなそういうものを制定している。
 それから恋愛については、第一変っていることは恋愛が自由ということ。ソヴェトは恋愛が自由である。フランスも自由である。そこでどう違うかというと、フランスが恋愛が自由だということは、資本主義末期の個人主義的に恋がお互を拘束しないということから起って来る恋愛の自由だ。男が或る女と関係して、嫌になって捨てる。女が姙娠しても男は責任を負わない。それでも女は訴えるところがなく、セーヌ河へ赤ん坊をもって飛込むという恋愛、フランスの恋愛技術は男より数の多すぎる女の経済的必要から進歩しているかも知れないが、社会的にはそういう風な個人的なものである。
 ソヴェトは恋愛が自由だというけれども、それは何故かというと、男も女も経済的に独立した社会人であるから、社会人としての責任は各自自分が負うから、そこで自由だということになって来るわけだ。恋愛はいくら自由だといっても、男が女と関係して姙娠したり、子供を生んだりした時雲隠れしてそれで終れりとしてしまうことは出来ない。子供の哺育費というものは男の月給の中から職業組合を通して取られる。それだけの社会的義務がある。若しその男がずるくて女が補助費を貰えない場合は、裁判をして男の親があれば、その親の家から子供の哺育費を取ることが出来る。(併し土地には手を触れることは出来ない。何故ならば、土地というものは農業生産の基礎である、一農戸に属するものだから、土地を子供の哺育費に取るということは出来ない。)

 勿論ソヴェトでも社会的責任を理解している人間ばかりはいないから、いろいろ間違ったことが沢山ある。だから自分の女房があっても他に女をもっている。要するに妾ですが、妾をもっている人もある。併し形はそうであるけれども、女がそれによって、つまり男によって食わせてもらっているか或はそれとも合意的に一時的に生産単位として独立している女が男とそういう関係を結んでいるかということで随分また社会的の意味は違って来る。現在の若い青年共産主義同盟員、女子青年共産主義同盟員、そういうものの恋愛に対する観念はどうかというと、戦時共産主義時代は、社会が新しいものを創り、古いものを壊そうとする非常に激越した時代だった。だから恋愛というものに対する考え方も或る点非常に機械的になってしまった。
 個人個人の間の恋愛形態が社会にどれだけ連帯責任をもつかということよりはむしろ旧時代の恋愛および結婚生活が絶対のものであるという私有財産制から発生したブルジョア一夫一妻制の宗教的考えを打破するに急であった。だけれども現在は建設時代に進んでいるから、恋愛、家庭生活、結婚ということが各個人の社会人としての連帯責任に基礎を置いているということがはっきりしている。だから万一一人の青年共産主義同盟員が片っ端から女を引っかけてゆくとする。それを恋愛は自由であるからとして放任して置くかというと全然反対である。余り非社会的な行為をする場合には青年共産主義同盟の中で、同志的制裁を加えるか、反省を促される。女の社会的価値を無視したことをやれば勿論除名もされ得る。だけれどもそれだけが第一の問題となって除名されるということはない。つまりそういうことをするのがその男の社会連帯責任を無視する一つの実例として見られるのです。
 それからお互の性的関係は先ず第一に衛生問題であって、性的な慾望をいろいろ宗教的に決めてしまったり、そこへ妙な道徳観を拵えたりする、そういうことはさっぱり捨てている。男女が互に好きだということ、それは性慾から派生した感情、そういう風にはっきり理解して行く。だから自分の性慾が自分を刺戟して或る人間に対する興味を感じた場合、その対手の社会人としての価値で引つけられたかどうかという点はきりはなして考える。その点での誤謬
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