も年が若くてもマルクス・レーニン主義を充分知らなくても、構内に入っている電車を暴走させて人の命を奪って、これで日本の流血革命だなどといって手を叩いてよろこぶような若者はいない。三鷹電車区の細胞にはそんな馬鹿は一人もいない。また、そこまで私は馬鹿にわをかけた者ではない。私は革命がそのような過激な手段によって達せられるものではないと考えている。」
「われわれマルクス・レーニン主義の党は、働く大衆をもっとも愛し、その幸福をもっともよろこぶことができ、その不幸をもっとも悲しむことができる。働く大衆の一人を失うことをわれわれは最大の悲しみとするのである。だからすべての人の先頭に立って闘うことができる。その一員たるわれわれになぜこのような無謀なことができようか。」「このような検察当局の行為は、かつてナチスのヒットラーがやったことと何ら変らない。これに対してわれわれは死をとして徹底的に闘う。否、日本の民主主義を愛する人はみんな徹底的に闘うだろう。民主主義の潮流に逆行する現在のファッショ的存在は、全世界の民主主義を愛する人により徹底的に糺弾され断罪されるときがくるだろうということを私はいいたい。日本の検察当局が事実正義を愛する者の味方であるならば、この陰謀の一つであるこの公訴を即刻とり消すべきである。」と。
偽証罪で公訴されている石川政信(二七)元鉄道技術研究所員と金忠権(三一)元『三多摩民報』記者らはこう陳述している。「私は一ツ云いたいことがあります。それは、検事の理解に一致しないすべての証言は、偽証であって、偽瞞であるとこのような独断的、専断的言辞に対して私は心からの憤まんをもっています。」(被告石川)つづいて金被告ものべた。「偽証罪に対する起訴取消を行っていただきたい。」「検事がこのようにすべてのものをいう者に対して全部が起訴ということにしてこういう風にひっぱられるなら、日本の全人民は一言もしゃべることができない。」「検事は何といっているか、君があまりはっきりするから悪い。もう少しぼやかしたらどうかということは、一体正直なことをいえというのか、それとも嘘をいえというのか、これをはっきりして頂きたい。」
この点に連関して、午後の法廷で林弁護人の行った弁論の中に、特別注目をひく箇所があった。「さる十月二十七日に石川検事が東京地検の三階の会議室で、検察事務官に対する刑事訴訟法の
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