を考えさせるだろうか。
A・Pのカメラが渡米婦人団の写真の中心に赤松常子さんの日本服姿をとらえたところをみると、赤松さんの渡米効果は、この面で成功といえるのだろう。湯川夫人の日本振袖の姿も、ノーベル賞授賞の式場に異国情緒を添えた。
それぞれの国の民族が婦人や子供、としより連まで固有の服装に身をかざって、その土地伝統の祭りを祝うような日の光景は、はた目にもおもしろく愉しいものだ。けれども、その美しさにしろたのしさにしろ、その民族或いはその人々が実際には半ば奴隷の立場に甘んじていて、自分の民族の独立や世界の平和のために良心的な何の発言も行動もなし得ないほど無気力であったなら、その固有の服装が優美であり、みものになるという事実が、卑屈の粉飾以外の何ものでもないことになる。
どの一家にも失業の不安がある。誰の胸のなかにも、さし当って税をどうして払おうかという心配がある。まわりでは、帝国主義の戦争ヒステリーにかかったものたちの上ずった大声がこの次の戦争には日本の人民を利用することができる、傭兵制を考えられる、とわめきたてている。日本という一つの島国がアジアに向って太平洋のはじにつらなっ
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