ているという自然の現象は、日本が人類平和に対して害毒の島とされなければならない宿命を語ることではないのである。
 日本の人民そのもののうちに平和を守ろうとしている誠意を信じることができるからこそ、パリの世界の平和を守る会は、去年の大会で決定した国際平和賞の候補すいせんを、日本の「平和を守る会」支部にもとめて来ている。

 国外に行っている日本婦人たちの、日本服姿が優美なものとして見られるならば、それもわるいことではないであろう。ただ一つ願うことは国外の日本婦人たちが、それを日本の婦人特有の姿としてそれゆえに臆さず日本服で歩いているならば、どうぞそれにふさわしく、日本の全人民、婦人、子供の真実の声を語ってほしいことである。日本の婦人。日本の子供。戦争によって何ひとつ利得するところのないことを学んだ正直な人民は、戦争を欲していない。軍事基地とされることは、ことわっている。これだけの言葉は、こんにち、日本と世界のために暗記してでも、くりかえされる意義をもっている。わたしたちは、平和を、欲している。たった三ことのこの日本語こそ、どの国の言葉に訳しても三つの言葉にまとまって世界の良心につながっているのである。[#地付き]〔一九五〇年三月〕



底本:「宮本百合子全集 第十五巻」新日本出版社
   1980(昭和55)年5月20日初版発行
   1986(昭和61)年3月20日第4刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第十二巻」河出書房
   1952(昭和27)年1月発行
初出:「婦人民主新聞」
   1950(昭和25)年3月3日号
入力:柴田卓治
校正:米田進
2003年6月4日作成
青空文庫作成ファイル:
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