生」と自分を呼んで有難がって居る若い者が、
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「もう今月はなすっても好いでしょう。
 先々月からズーッとお休みつづけですからね。
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などと几帳面に云って来るので、気乗りもしないがそれ等の者のためにと云う様で木曜日が定められた。
 昼間では働きに出るのに困ると云うので、其の日も夜から開かれた集りには十五六人の者が出席した。
 息づまる様に黄暗い電気の下で、小机だの針箱だのを積み重ねた上に白かなきんを掛けたテーブルをひかえて、落ちそうに目鏡を掛けた主人が小形のバイブルと讚美歌集を持って立った。
 敷く物もなしに取り澄した様子で居並んだ者達は、一種異った気持を持って、禿げ上った大きな額と白く光る髭の有る老人を見あげた。
 いつもの習慣通り家の者は一番後に座って各自に勝手な事を考えながら、壁に掛けられた十字架のキリストの絵だのマリアの石版画を眺めたり、平常馬鹿をつくしてお関に押えつけられて息もつけない様にして居る時とはまるで違って、ほんとに何か出来そうに見えて居る主人を懈《だ》るそうに見たりして居た。
 扇や団扇を話の間に使ってはいけないと云い渡されてあるので、物は方便だとあきらめて、妙な声を出してはアーメンと云うのも聞き捨てて居るお関は、都合さえよい様になるのならと素直に夫の命を守って、折々暑苦しそうに身を揺ったり、足に止まった蚊を無作法な音をたてて打《たた》いたりしながら云い訳に苦しんで居る橋本の金の事を考えて居た。
 自分の傍に引きつけて坐らせてある恭の方を時々見ながら、
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「彼那に止めるのも聞かずに使って仕舞って、一体どうする積りなんだろう。
 使う時は勝手に使っといて、後の仕末はいつでも私にさせるものだと思ってる。
 さかさに立ったって今すぐ彼れ丈のものが右から左へ出るものではなし、若し彼の家で他の人でも頼んだら皆ばれて仕舞うのに、何て呑気な人なんだろう。
 アーメンどころじゃあ有りはしない。
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 お関は、忌々しい様に落着いた様な調子で、
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「神の我々を恵ませ給う事は……
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と云って居る主人を上目で睨んで居た。
 ※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子が来てから不安がって居た問題が又お関の心に鮮やかに成って来て、
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