長いものである。
 まだ心の育ちかけの漸々赤坊と云う名からついさっきはなれたと云う様な時に「お久美さんは可愛い」と思い込んだのが一種の感情の習慣になって、お久美さんと云えば憎めないもの、可愛いものとなって来て居るのが気味の悪い位種々な時にフイフイと現われて来た。
 ※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子はお久美さんを疑い切れなかった。
 はたの者がどんなに散々とこなそうともつまりの時にためらわぬ弁護を加える気持を持って居た。
 そして、自分とお久美さんの間には何の隔りもなかった――女に有り勝な物質上の遠慮だとか嫉妬だとか云うものは完く姿をかくして居たのである。
 女姉妹のない※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は子供の時からまるで年上では有っても妹に対する様な気持をお久美さんに持って居たので、勿論たまには不快に思う事又は激しい感情に動かされて殆ど普通に有り得ない気持になる事はあったとしても、揺がぬ基礎になって居るその感情は二人の永年の間をあきない丁度米の飯の様な味を出させて居た。
 と、※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は、その時もたった一人で思って居るのであった。

        十七

 其の頃から村中には、重三に対して種々な噂が立ち始めた。
 誰が云い出した事かは知らなかったが、
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「お関さんと何て似て居らっしゃるんでしょう。
[#ここで字下げ終わり]
と云う低いつぶやきが皮肉に彼処此処の村人の中に繰り返された。
 勿論※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子もそれを聞いて寒い思いをした。
 祖母は皆と共に嘲笑って居た。
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「大きい声では申されません事ですけれどね、どことなし似て居らっしゃる所が有りそうでございますね。
 そんなにはっきりは分りませんけれど、どうもね。
 怪しいものでございますよ。
[#ここで字下げ終わり]
 それ等の言葉は、要領を得なければ得ない丈、曖昧であればある丈、物ずきな人間の心に種々の想像を起させて、陰気に低くボソボソとそれで居てなかなか執拗に山田の家を被いに掛った。
 云い出した者は勿論、お関や何かに積った悪意を持って居る者共だとは思って居たけれど、お関は気の顛倒する程の恐怖に襲われた。
 自分で調える事をなし得ないまで
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