おかれている偽瞞的な環境のためにアナーキズムから社会観を本質的に高められることができず、労働者弾圧にも動員される右翼の暴力団の生活に近接する機会をもつようになって、その描きてとしてあらわれているひともある。そして本質においては反人民的な勢力のスポークス・ウーマンとなりつつあるとき、小池富美子の自然発生の生のたたかいが、岩をめぐり、草の根にしみて、より高い人民的なものに成長しはじめていることは、意義ぶかい現実である。
民主主義革命の道は人民の歴史の実質の高まりである。そして常に苦しい条件におかれつづけている働く婦人、子供、青年の人生のより意味のある社会的価値づけを強く主張している。日本の民主主義の道は、困難をきわめている。けれども小池富美子さんのように、あやうく残酷な商業主義出版の波の下に溺れ死なされそうだった一つの力づよい才能と生活力とが、おびただしい内と外との困難にからまれながらも、階級的成長と人民の運命の打開の可能の上に置きなおされたのは、やはり、人民の歴史そのものの前進によってもたらされたプラスの実例であると思う。
[#地付き]〔一九四九年十月〕
底本:「宮本百合子全集 第十八巻」新日本出版社
1981(昭和56)年5月30日初版発行
1986(昭和61)年3月20日第2版第1刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第十五巻」河出書房
1953(昭和28)年1月発行
初出:「宮本百合子選集 第十五巻」安芸書房
1949(昭和24)年10月発行
入力:柴田卓治
校正:磐余彦
2004年2月15日作成
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