偏向」批判をそのままくりかえし、これらの人々の活動の積極面――プロレタリア文学運動の成果の抹殺が試みられた。それは、客観的には、非民主的諸勢力への加担を結果することである。「一連の非プロレタリア的作品」を思い出させることで、わたしの現在での活動や発言を牽制する効果を期待するとすれば、それは不可能である。
あの評論にふくまれている誤謬は、プロレタリア文学の戦線拡大に対する政治的態度の未熟さと、そこからひきおこされた文学に対するピューリタニックな熱情の噴出にあったのだった。それは、作品を批評された作家たちにやけど[#「やけど」に傍点]させたばかりでなく、筆者自身も自分の噴き出した火焔をあびた。
こんにちになれば、「一連の非プロレタリア的作品」を書いた当時のわたし自身の政治的な幼稚さはよくわかる。同時に、その評論をめぐって、そこに猟犬のように群がりたかって、わたしを噛みやぶり泥の中へころがすことで、プロレタリア文学運動そのものを泥にまびらす役割をはたした人々の動きかた――政治性も、くっきりと描きだすことができる。それは、かみかかった人々のみんなが、わたしと同様に若くて、幼稚だった、という
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