った人間性の恢復と未来の勝利のためにささげられる。二つの作品には自然発生的な萌芽として、新しい日本の人民生活の文学の端緒と、現代文学が私小説から脱却してゆく可能の方向及びこれからの日本文学が実質的に世界文学の領野に参加し、そこでになってゆくべき現実の性格などについて、示唆をふくんでいる。
「播州平野」と「風知草」とは作者にとって第二の処女作のように思われる。それらがほんとに思わずも溢れる川のように溢れてかかれた作品であり、ほんとに書かずにいられない題材と主題とによっているというまじりけなさの点で、これら二つの作品のかげには、人生の初秋において妻として甦った一人の女の豊かな秋のみのりへの生と文学への息づきがある。
 この二つの作品は一九四七年度の毎日出版文化賞をうけた。
   一九四八年九月
[#地付き]〔一九四八年十月〕



底本:「宮本百合子全集 第十八巻」新日本出版社
   1981(昭和56)年5月30日初版発行
   1986(昭和61)年3月20日第2版第1刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第十五巻」河出書房
   1953(昭和28)年1月発行
初出:「宮本百合子選集 第七巻」安芸書房
   1948(昭和23)年10月発行
入力:柴田卓治
校正:磐余彦
2004年2月15日作成
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