」「人間が人間自身を世界から消滅せしめ得るようなものを作った。」「しかし社会科学では幸か不幸か、こうした天才が現れていない。もし社会科学者が人間は人間と生活するという極めて簡単なことに同様の天才を示したならば、この世界は全然ちがったものになるであろう。もしわれわれが科学の成果に加うるに人間関係方面の成果をもつけ加えることができたならば、この世の中は完全なパラダイスであろう」「むずかしいことは、人間関係の進歩は自然科学の進歩と歩調をあわせなかったということである」云々と。
 一九〇〇年にはいってからこんにちまでの世界史を虚心にしらべてみたとき、わたしたちは、人間関係の進歩が科学の進歩と全く歩調をあわせなかったといい得るだろうか。バンチ博士は博大な彼のヒューマニズムと偏見の拒否にかかわらず、現代の世界に、科学の成果に人間関係方面の成果を加えようとするものとして、社会主義社会ソヴェト同盟が存在している事実を見おとしている。ソヴェト同盟はプロレタリア階級の革命という道を通って、すでに三十四年間実在し、第二次大戦では、ファシズムとのたたかいに於て連合国中最大の出血に耐えた。最近では中国が、アジア
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