かも、その細民カードの中から、タッタ四十人その産院へ入れるとして、それが広汎なプロレタリアート婦人の一人一人に、どんな現実の助けとなるか。
 失業したプロレタリアートの妻はもちろんです。失業しないまでも賃銀半額に引下げられた労働者の暮しはどんなものか。その中で赤坊は産めないからというので、姙婦相談所へ出かけ、避姙を教わったり、人工早産して貰ったりする。
 だが姉妹。目先の便利でゴマ化されるのはやめよう。プロレタリアート婦人の胸には消えない恨みがのこされる。資本主義の社会はプロレタリアの婦人からよろこび勇んで母親になる、それこそ天来の権利を奪って、代りに人工早産をあてがっているのだ。
 日本全国のプロレタリアートの半数を占める婦人労働者の姙娠、出産の権利は、こんなものが一つや二つできたところで、どんな利益もうけはしない。
 プロレタリアートが勝利したソヴェト同盟の政府は、まっさきに、どうかしてプロレタリアの母が丈夫で立派な子を生むように、あらゆる法律で、利益を与えている。
 労働婦人はみんな四ヵ月の有給休暇をもらって、月給の半分の仕度金を貰って、そして無料産院で赤坊を生み、なお九ヵ月間牛乳代をもらう。それだけの設備と権利がある上で、避姙や人工早産がゆるされているのです。
 温情主義で搾取して、慈善設備でプロレタリアの母から子を奪う資本主義の文明をわれわれは徹底的に批判しなければならない。
 女も手を握り、階級として立ち、せめて、よろこんで母になる権利を認めるプロレタリアの社会を一日も早くつくろうではないか。
 手近いところで、われわれプロレタリアの病院、無産者病院をみんなの力で、強く大きいものにしてゆくこと。
 更に団結した力とハッキリした指導にしたがって、資本主義の社会施設を真にプロレタリアートの利益のために使えるものとしてゆくこと。
 われわれの毎日の生活の中には闘うべきことが多くある。プロレタリアの母のための産院の問題などもこの一つです。

 ところで、ここにもう一つこういう事がある。
 昔から女は相談相手というものを持たなかった。毎日の生活の中でいろいろの思案にあまることが起った場合、夫や親や友達に相談もできることじゃないし、また相談したところで満足な解決は得られないという時、プロレタリア婦人はいつも困って来た。
 組合に入っていたりするひとは、そういう時でも
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