は、みんな資本主義の世の中であることが原因です。めいめいの私有財産をつたえ守るために家族制度が発達して来ています。一軒の家の中だけでかたまり、儲けをこっそり一軒の家の中へだけためて行く。(大きくなれば三井、三菱)損をして又は失業して食べられなくなろうとも、やっぱり苦しみはその一家だけが背負うように世の中が出来ている。
 ですから、例えば工場でお父さんが十五年も働きつづけ、機械にはさまれ死んだとしても、会社は半年ももたない涙金をくれるぎり。あとは母親と娘、息子でやっとこ生きて行かねばならぬ。だから、どうしても父親のない後の母親などは、娘の重荷になる。若い男にしろ、女房は亭主のものと思う古い風習がのこっているところへ、この頃の不景気では女の母親の世話までひきうけるほど給料はとれない。そこに辛いところがあるのです。
 世の中がかわって、永い間働いた者の妻は夫の死後一生扶助料を政府から貰えるように、夫と妻との権利は平等であるように、養う親持ちの場合は、そのことを政府が考えて助けてくれるような社会にならなければ、女は若くても年とっても安心な暮しは出来ません。
 兵役にしろ、大切な働きてを一年も二年もとりっぱなしで、オイチニ! オイチニ! とばかりやるし、本はろくなのがよめず、家業は忘れる。あとにのこって苦労するのはあなたのように、多くの場合女です。これもブルジョア社会のつらさです。
 働くものの国ソヴェト同盟では、こういうことで苦しむ女はなくなりました。国全体が働く者によって働くものの幸福を真先に考えつくられているから、或る年限真面目に働けば年とって独立に暮らせるだけの扶助料を国家が出してくれます。働いていたお父さんが死んだ場合、お母さんへの扶助料は出ます。
 集団農場では、兵役に行ってしまった若者の家族の中に働けないものがいるときは、集団農場が責任をもって養ってくれる仕組なのです。
 こうなってこそ、めいめいが安心してくらせ、今われわれのまわりで何千人という正直な、働く婦人が経験している苦しみはとりのぞかれるわけです。
 こう云ったからと云って、今すぐあなたの困難はとりのぞかれないのは知れています。けれども、あなたの困難はいろいろ形こそちがえ決してあなた一人のものではなく、日本の若い女数千人が皆負わされているものであること、そして、それは深い今の世の中の不合理な仕組から来て
前へ 次へ
全9ページ中2ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング