へたぐされとなってきている。
 わたしたちは、こういう全体の傾向を理解し、委員会の本質について、一層監視をおこたってはならない状態におかれているのである。
 参議院の法務委員会と裁判所との間に、浦和充子の事件について、見解の相異があり、法務委員会の権限について論議されている。こういう問題も、わたしたちは、人民の基本的人権[#「権」は底本では「件」]の擁護とブルジョア的な法律適用による裁判が果して公正なものであるかどうかについての絶え間ない注目とを基礎にして、判断してゆく必要がある。参議院の引揚援護委員会も吉村隊事件ではいかがわしい委員会の本質を、人々の前にむきだした。
 今日の新聞では西尾末広の偽証罪が不問に附せられるかもしれないことについて、弁護士である人からの投書があった。有名なえらい人の偽証は無罪とされ、一般の人の偽証は犯罪とされているその点への疑惑が語られていた。裁判が精神的・物質的圧力から必ずしも自由でないことがうかがえる。
 目さきの話題だけに注意を奪われずに、わたしたちは、こんにちの反民主的な権力に影響をうけている各種の委員会の活動の本質について、積極的な発言をしてゆく義務がある。――わたしたちは、自分たちのこの高税で彼らを養い、政府をつくらせているのであるから。[#地付き]〔一九四九年六月〕



底本:「宮本百合子全集 第十六巻」新日本出版社
   1980(昭和55)年6月20日初版発行
   1986(昭和61)年3月20日第4刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第十二巻」河出書房
   1952(昭和27)年1月発行
初出:「婦人民主新聞」
   1949(昭和24)年6月11日号
入力:柴田卓治
校正:磐余彦
2003年9月14日作成
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