だという。ちょうど雨が窓を打つ音をきいたので、細君はどうぞ家《うち》にいてくれと願ったが、泣かんばかりに願ったが肯《きき》入れないで、大きな雨外套に身を包んでそのまま出ていってしまった。
 細君が翌朝眼を覚ましたのは七時だった。が、その時はまだストレーカは帰っていなかった。そこで細君は急いで着物を着て、女中を呼んで一緒に厩舎まで行ってみた。すると、厩舎の戸は開け放しになっていて、中にはハンタが椅子にうずくまって深い深い眠りに落ちているばかりで、白銀の厩舎は藻抜けの殻で、ストレーカの姿も見えなかった。
 馬具部屋の二階の乾草の中に眠っている二人の若い者をすぐに呼び起したが、二人とも寝ぼすけな性質《たち》なので、夜中に何もきかなかったという。ハンタはむろん強い薬品のために眠っているのに違いなかった。ゆり起してみたが、全く正体なく眠っているので、それはそのままにしておいて、二人の若者と二人の女とで、ストレーカと白銀とを探しに[#「に」は底本では「た」]飛び出して行った。というのは、ストレーカが何かの理由で朝早くから白銀を運動させにつれて行ったものだろうと思われたから。だが、厩舎の傍の低い丘へ
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