は、他の事件の前奏曲であり、そしてその最高の峠を越してしまうと、その登場役者たちは、忙わしい我々の生活から、永久に消え去ってしまった。
しかしこの事件のことを記した稿本の末尾には、ちょっとした追記があって、ヴァイオレット・スミス嬢は、たしかに大きな財産を相続し、そして現在は、あの有名なウェスミンスター電業者の集りである、モートン・エンド・ケネデー協会の、高級会員である、シリル・モートンの妻になっていると記されてある。それからウィリアムソンとウードレーは、誘拐罪と殴打罪で、前者は七年の懲役、後者は同じく十年に処された。カラザースのことについては、私は別に記録してはいないが、しかし、ウードレーがもっぱら兇悪漢と云う定評で通っていたから、彼のやったことは法廷では、そう重大視はされなかったろうと確信する。たぶん数ヶ月の懲役と云うところが、適当な求刑であったろう。
底本:「世界探偵小説全集 第四卷 シヤーロツク・ホームズの歸還」平凡社
1929(昭和4)年10月5日発行
※「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に基づいて、底本の表記をあらためました。
その際、以下の置き換えをおこないました。
「彼奴→あいつ 貴女・貴方→あなた 彼の→あの 或→あるい 如何→いか 何れ→いずれ 何時→いつ 愈よ→いよいよ 所謂→いわゆる 於ける→おける 却って→かえって 難い→がたい 曾て→かつて かも知れ→かもしれ 屹度→きっと 位→くらい 極く→ごく 此方→こっち 毎→ごと 左様なら→さようなら 併し→しかし 而も→しかも 直→じき 屡々→しばしば 暫く→しばらく 直・直ぐ→すぐ 即ち→すなわち 其処→そこ 其・其の→その 大分→だいぶ 沢山→たくさん 多分→たぶん 丁度→ちょうど 一寸→ちょっと て居→てい で居→でい て居・て置→てお て見→てみ て貰→てもら 何処→どこ 処→ところ 何方→どっち 何誰→どなた 兎に角→とにかく 猶→なお 仲々→なかなか 成る程→なるほど は居→はい 許り→ばかり 筈→はず 甚だ→はなはだ 不図→ふと 程→ほど 先ず→まず 未だ→まだ 見たい→みたい 見る見る→みるみる 寧ろ→むしろ 若し→もし 勿論→もちろん 尤も→もっとも 専ら→もっぱら 矢張り→やはり 稍々→やや 漸く→ようやく 僅→わずか」
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
※底本中、混在している「チルターン・グランジ」「チルタアーングランジ」、「チャーリントン」「チァーリントン」「チューリントン」、「シイリール」「シリル」はそのままにしました。「燈」は同底本から作られたファイルと同様に、そのままにしました。
※底本は総ルビですが、一部を省きました。
入力:京都大学電子テクスト研究会入力班(畑中智江)
校正:京都大学電子テクスト研究会校正班(大久保ゆう)
2005年1月5日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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