ついて、幾らでも警察を助けてやることが出来るのだ」
 と、ホームズは、窓ぎわに目ばかり光らせているその男を見やりながら云った。
「人間の性質と云うものは不思議に入り組んだものだ。君は、強盗や人殺しでさえも、彼の兄弟の首に縄がかかったと云うことを知って、自殺する気になるほどな肉親の愛情を起こすものであることが、分かったろう。しかしもう私たちは私たちの行動について躊躇しなくてもよい。私とワトソンとはこの男の番をしてますから、ピイクロフトさん、あなたはどうか警察へこのことを知らせにいって下さいませんか」



底本:「世界探偵小説全集 第三卷 シヤーロツク・ホームズの記憶」平凡社
   1930(昭和5)年2月5日発行
※「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に基づいて、底本の表記をあらためました。
その際、以下の置き換えをおこないました。
「彼奴→あいつ 貴方→あなた 或→ある 如何→いか 一旦→いったん 於て→おいて 於ける→おける 位→くらい 極→ごく 而して→しかして 随分→ずいぶん 即ち→すなわち それ所か→それどころか 大分→だいぶ 沢山→たくさん 只
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