と私は、この我々の面前の難事業を、快刀で乱麻を断つように、明快に解決を与えた、私の友人の説明に、全く魅了されて傾聴した。
「先生、それからどうなされたのですか?」
検察官は訊ねた。
「私は種々の理由から、この Abe Slaney. と云うのは、亜米利加《アメリカ》人であろうと推定したのです。この Abe と云うのは元来、亜米利加《アメリカ》式の綴《つづり》にあるし、それに亜米利加《アメリカ》から来た、一通の手紙と云うのが、今回の大事件の端緒でしたからな。それに更に私は、この事件には、更にその中に伏在した、隠れたる犯罪があるに相違ないと睨む理由があったのです。つまり夫人が過去について、ちょっと仄めかしたあと、夫に対して絶対にそれを追求させなかったなどと云うことは、明かにそうした理由を暗示しているものだからね。それで私は、私の友人でニューヨークの警務局の、ウィルソン・ハーグレーブに、海底電信を打ってやったのです。この男はたびたび、私からお蔭を蒙《こうむ》っているものですがね、で私はこの男に、Abe Slaney と云う者を知っているかどうかと云ってやったのだが、その返電はこうだったので
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