いた親じ。――一体、どうしてあの親じが、あんな無頼漢につかまったんだろう? ――だが、僕は君が来てくれたので本当に嬉しいよ。ホームズ。――僕は君の判断と分別とに絶対信頼しているんだ。そして君は僕に、きっと一番いい方法を教えてくれるだろうと信じているんだよ」
僕たちは滑らかな白い田舎道を走っていった。僕たちの前には、広い川の長々と延びた流れを越して、沈みかかった太陽の赤い光りが輝いていた。僕たちの左手《ゆんで》にある森の上には、もう大地主であるトレヴォの家の高い煙突と旗竿とが見えていた。
「僕の父親は奴を庭番にしたんだよ」
と友達は云った。
「だが奴《やっこ》さんそれでは満足しなかったので、賄方《まかないがた》に出世させてもらったんだ。まるで家の中は彼奴《かやつ》の思うように左右されてるようなものなんだ。彼奴《かやつ》は家の中をぶらぶら歩き廻って、何でも自分勝手な事をしてしまうんだよ、女中たちは彼奴《かやつ》の酔っ払らいと乱暴な言葉使いに腹を立ててブツブツ云う。親じは仕方なしに、その不平を押えるためにみんなの月給を上げてやると云う始末なのだ。それなのに奴さんは、ボートを引っぱり出し、
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