もせず甲斐がいしく救助に向かった若者たちは、水に浸って漂っていた伊東家のボートを曳《ひ》いて空《むな》しく引き揚げてきた。
 伊東は愛する懐かしい人たちばかりで埋まった死人台帳に宝沢の名を書き込み、その日の日記の終わりに――宝沢法人、鴨猟《かもりょう》のため、兜岩に赴き、暴風雨に遭難、溺死《できし》す。享年四十二歳。
 と付記した。



底本:「清風荘事件 他8編」春陽文庫、春陽堂書店
   1995(平成7)年7月10日初版発行
入力:大野晋
校正:ちはる
2001年4月30日公開
2006年4月15日修正
青空文庫作成ファイル:
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