おぼしく一人戸を明けて出づれば一人戸の内に入りぬ。我今の世に正しき者小学教員と巡査となりと思ひしに、此頃小学教員収賄の醜聞続々世間に聞えてたのもしきは巡査ばかりとなりし心細さ。薄給にして廉なるは君子たるに庶幾《ちか》し。上下皆濁りし世の中に我只※[#二の字点、1−2−22]此人を憐む。
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交番の交代時の夜寒かな
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家々の門ラムプがあるは薔薇の花に映りあるは木の葉がくれにちらつく、此景根岸の特色なるべし。
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樫の木の中に灯ともる夜寒かな
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家に帰りつく。
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暗やみに我門敲く夜寒かな
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底本:「日本の名随筆72 夜」作品社
1988(昭和63)年10月25日第1刷発行
1999(平成11)年4月30日第7刷
底本の親本:「子規全集 第九巻」改造社
1929(昭和4)年8月発行
入力:小林繁雄
校正:門田裕志
2003年9月14日作成
青空文庫作成ファイル:
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