全く調子を解せざるをや。しかるにかくのごとき曙覧をも古来有数の歌人として賞せざるべからざる歌界の衰退は、あわれにも気の毒の次第と謂《い》わざるべからず。余は曙覧を論ずるに方《あた》りて実にその褒貶《ほうへん》に迷えり。もしそれ曙覧の人品性行に至りては磊々落々《らいらいらくらく》世間の名利に拘束せられず、正を守り義を取り俯仰《ふぎょう》天地に愧《は》じざる、けだし絶無|僅有《きんゆう》の人なり。

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この稿を草する半《なかば》にして、曙覧|翁《おう》の令嗣《れいし》今滋《いましげ》氏特に草廬《そうろ》を敲《たた》いて翁の伝記及び随筆等を示さる。因《よ》って翁の小伝を掲げて読者の瀏覧《りゅうらん》に供せんとす。歌と伝と相照し見ば曙覧翁眼前にあらん。
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[#地から2字上げ]竹の里人付記
[#地付き]〔『日本』明治三十二年四月二十三日〕



底本:「子規選集 第七巻 子規の短歌革新」増進会出版社
   2002(平成14)年4月12日初版第1刷発行
底本の親本:「子規全集 第七卷 歌論 選歌」講談社
   1975(昭和50)年7月18日第1刷発行
初出:「日本」日本新聞社
   1899(明治32)年3月22日〜24日
   1899(明治32)年3月26日
   1899(明治32)年3月28日
   1899(明治32)年3月30日
   1899(明治32)年4月9日
   1899(明治32)年4月22日〜23日
入力:kompass
校正:門田裕志、小林繁雄
2008年2月29日作成
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