酒
正岡子規
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)一処《いっしょ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)五|勺《しゃく》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から2字上げ]〔『ホトトギス』第二巻第九号 明治32[#「32」は縦中横]・6・20[#「20」は縦中横]〕
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○一つ橋外の学校の寄宿舎に居る時に、明日は三角術の試験だというので、ノートを広げてサイン、アルファ、タン、スィータスィータと読んで居るけれど少しも分らぬ。困って居ると友達が酒飲みに行かんかというから、直に一処《いっしょ》に飛び出した。いつも行く神保町の洋酒屋へ往って、ラッキョを肴《さかな》で正宗《まさむね》を飲んだ。自分は五|勺《しゃく》飲むのがきまりであるが、この日は一合《いちごう》傾けた。この勢いで帰って三角を勉強しようという意気込であった。ところが学校の門を這入《はい》る頃から、足が土地へつかぬようになって、自分の室に帰って来た時は最早酔がまわって苦しくてたまらぬ。試験の用意などは思いもつかぬので、その晩はそれきり寐てしまった。すると
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