がそれを気の毒に思ふて犬の屍を埋めてやつた。それを見て地蔵様がいはれるには、八十八羽の鴉は八十八人の姨の怨霊である、それが復讐に来たのであるから勝手に喰はせて置けば過去の罪が消えて未来の障りが無くなるのであつた、それを埋めてやつたのは慈悲なやうであつて却て慈悲で無いのであるけれども、これも定業の尽きぬ故なら仕方が無い、これぢや次の世に人間に生れても、病気と貧乏とで一生困められるばかりで、到底ろくたまな人間になる事は出来まい、とおつしやつた……。といふやうな、こんな犬があつて、それが生れ変つて僕になつたのではあるまいか、其証拠には、足が全く立たんので、僅に犬のやうに這ひ廻つて居るのである。



底本:「日本の名随筆76 犬」作品社
   1989(平成元)年2月25日第1刷発行
   1991(平成3)年9月20日第5刷発行
底本の親本:「子規全集 第九巻」改造社
   1929(昭和4)年8月
入力:渡邉 つよし
校正:門田 裕志
2001年10月9日公開
2006年4月10日修正
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