螢つめたき光かな
時鳥千本卒塔婆宵月夜
聞に出てぬれてもとるや閑古鳥
ちゞまれば廣き天地ぞ蝸牛
【待戀】
蚤と蚊に一夜やせたる思ひ哉
藺の花の中をぬひ/\螢哉
あとはかりあつて消けりなめくしり
世の中をまひ/\丸うまはりけり
菅笠の生國名のれほとゝきす
露となり螢となりて消にけり
浮世への筧一すぢ閑子鳥
どの村へかよふ筧そ閑子鳥
[#「浮世へ」と「どの村へ」の句の上には、この二つの句を括る波括弧あり]
すめはすむ人もありけり閑子鳥
並松やそれからそれへ閑子鳥
垣こえて雨戸をたゝくくゐな哉
【根岸】
水鷄叩き鼠答へて夜は明ぬ
谷間や屋根飛こゆるほとゝきす
鵜の首の蛇とも見えて恐ろしき
ある時は叩きそこなふ水鷄哉
一つ家を毎晩たゝく水※[#「※」は「奚+隹」、第3水準1−93−66、81−5]哉
【待戀】
我※[#「※」は「白+はち」、第3水準1−14−51、81−7]を蚊にくはせたる思ひかな
蚊の聲の中に子の泣く伏屋哉
親の血を吸てとぶ蚊のにくさ哉
蚊の聲を分て出たり蟇
初蝉の聲ひきたらぬ夕日哉
雨の夜や浮巣めくりて鳰の啼
【破蕉先生の咄を夫人よりきゝて】
筆もつて寐たるあるじや
前へ
次へ
全74ページ中32ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
正岡 子規 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング