に夏やせかくす團扇かな
ぬけ裏《ウラ》をぬけて川べのすゞみかな
烏帽子着て加茂の宮守涼みけり
早乙女やとる手かゝる手ひまもなき
さをとめのあやめを拔て戻りけり
早をと女に夏痩のなきたうとさよ
涼しさや闇のかたなる瀧の音
【京東山】
どこ見ても涼し神の灯佛の灯
すゝしさや笘舟笘を取はつし
一村は木の間にこもる卯月哉
虫干の塵や百年二百年
神に燈をあげて戻りの涼み哉
涼しさや客もあるじも眞裸
涼しさや音に立ちよる水車
涼しさや友よぶ蜑の磯づたひ
姫杉の眞赤に枯れしあつさ哉
松の木をぐるり/\と涼み哉
いさかひのくづれて門の涼み哉
梅干の雫もよわるあつさ哉
梅干や夕がほひらく屋根の上
雨乞や天にひゞけと打つ大鼓
雨乞や次第に近き雲の脚
打水やまだ夕立の足らぬ町
【鎌倉展覽會】
土用干うその鎧もならびけり
立よりて杉の皮はぐ涼み哉
【鎌倉大佛】
大佛にはらわたのなき涼しさよ
【稻村崎】
涼しさに海へなげこむ扇かな
【鎌倉宮土牢】
夏やせの御姿見ゆるくらさ哉
鎌倉は何とうたふか田植哥
涼しさに瓜ぬす人と話しけり
薄くらき奧に米つくあつさ哉
虫干や花見月見の衣の數
出陣に似たる日もあり土
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