の面に似て居る。筒様にして順々に変つて行く時間が非常に早く且つ其顔は思はぬ顔が出て来るので、今度は興に乗つてどこ迄変化するかためして見んと思ひはじめた。丸で見せ物でも見るやうな気になつたのだ。さう思ふとそれから変りやうが稍※[#二の字点、1−2−22]遅くなつた。
 其次には猿の顔が出た。それが西洋の昔の学者か豪傑かの顔と変つた。其顔は少し横向きで柔かな髪は肩迄垂れて居る。極めて優しい顔であるが只見たやうに思ふだけで誰の肖像か分らぬ。それから暫くは火が輝いて居るばかりで何の形も現れて来ぬ。猶見つめて居ると火の真中に極めて明るい一点が見えて来た。それが次第に大きくなつて往く。終に一つの大目玉が成り立つた。それが崩れると又暫く何も出来ずに居たが、やう/\丸髷の女が現れた。其の女の鬢が両方へ張つて居るのは四方へ放つて居る光線がさう見えるのである。其光線の鬢は白くまばらなので石膏細工の女かと思はれた。此女は初め下向いて眼を塞いで居たが、其眼を少しづゝ明けながら其顔を少しづゝあげると、段々すさまじい人相になつて、遂に髪の逆立つた三宝荒神と変つてしまふた。荒神様が消えると耶蘇が出て来た。これは十字
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