いた黒い外套を腕に掛けていた。流行のノウ・ストッキングで形の好い脚を高く組んでいる。帽子は被っていなかった。
 テイラア課長はにこにこして、
「何うなさいました、奥さん。怪我をしていらっしゃいますね」
 ルウスは、答えなかった。
 この時分にはもう、ルウス・ジュッドが逮捕されたというニュウスは、火のように市中に拡まって、部屋の外の廊下は、新聞記者や写真班で暴動のように犇めき合っている。
 傷の手当のために、ジョウジア街の市営病院へ移すことになった。その時、病院の入口で、新聞記者にもルウスを見せ、写真も撮らせる手筈がきまる。ライアン刑事と、ダヴィッドスン警部に左右から挟まれて、ルウスは、裏のエレヴエタアで署の建物を後にした。正面は群集で身動きもならないので、甘《うま》く晦《ま》いたのだ。
 エギザミナア紙の記者、リン・スレエトンは、病院の係に幾らか掴ませでもしたのだろう。医者の着る糊で硬ばった白衣を身に附けて、この、ルウスの傷の手当に立会い、それを読物にして、紙上に連載した。混雑の際だったから、こんなことも出来たのだろうけれど。亜米利加式の活躍である。左手の弾丸は、訳なく取れた。

  
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