せり、依って朕は国中に法を立て正義を行い、もって人民の幸福を増進せり」とあるから、日の神がこの法律を授けたとするのは間違っている。この柱は始めシッパールの日の神の神殿の前にあったから、この神を崇敬する図を彫ったもので、もしマルヅック神殿の前にあったならば、必ずやマルヅックを崇敬する像を刻してあったであろうと論じている。デリッチは、シャマシュはマルヅックの神性の一面であるから、この文に依って日の神が法を授けたという事を否認することは出来ぬと言うておる。グリムはこれを駁して、シャマシュがマルヅックの神性の一面であるということは、新バビロンで一神教の傾きを生じた時代の思想であって、それは遙か後世に生じたものであると言うておる。我輩門外漢にはその孰《いず》れが是《ぜ》であるかを正確に判断することは出来ぬが、ただこの法が神授の権に依って立てられ、この法の効力の基礎が神意にあるということだけは明らかである。
五 石柱法の内容
この石柱法の内容は主として私法、刑法および官吏法に関するものであって、直接に訴訟法、裁判所法などに関するものは極めて少ないのは、他の原始的法律と異なっている。原始的
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