唐浮fre semblably, and obey justyce!”
[#ここで字下げ終わり]
右に掲げた話は同書中の記事に拠ったのである。
[#改ページ]
三三 栴檀《せんだん》を二葉に識《し》る
ここは英国某市の裏通り、数人の児童今やマーブル遊びに余念もない。彼らは皆小学校にも通われぬほどの憫《あわれ》むべき貧児である。折からボーイス(Boyse)という一僧侶この場に来|懸《かか》り、暫くこの遊びを眺めておったが、忽ちこの鶏群《けいぐん》中に一鶴《いっかく》を見出した。相貌|怜悧《れいり》、挙止敏捷、言語明晰、彼は確かに野卑遅鈍なる衆童を圧して一異彩を放っておった。僧侶は頻《しきり》にこの児に対して愛憐の情を催し、菓子を与えてその家に誘い帰り、これに文字を教えてみると、果して一を聴いて十を識るの才がある。僧侶はいよいよ乗り気となり、授業料を給して学校に通わせることとした。
歳月流るるが如く、三十年は既に過ぎ去って、今や一箇の長老となりたるボーイス師は、一日議会を傍聴した。僧侶の身として何故にと怪しむことなかれ。これ彼がかつて培いたる栴檀《せんだん》の二葉が、今や議
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