ひろく万国の書を読て世界の事状に通じ、世界の公法をもって世界の公事《くじ》を談じ、内には智徳を脩《おさめ》て人々の独立自由をたくましゅうし、外には公法を守て一国の独立をかがやかし、はじめて真の大日本国ならずや。これすなわち我が輩の着眼、皇漢洋三学の得失を問わず、ひとり洋学の急務なるを主張するゆえんなり。
願くは我が旧里中津の士民も、今より活眼を開て、まず洋学に従事し、自から労して自から食《くら》い、人の自由を妨げずして我が自由を達し、脩徳開智、鄙吝《ひりん》の心を却掃《きゃくそう》し、家内安全、天下富強の趣意を了解せらるべし。人誰か故郷を思わざらん、誰か旧人の幸福を祈らざる者あらん。発足の期、近《ちかき》にあり。怱々《そうそう》筆をとって西洋書中の大意を記し、他日諸君の考案にのこすのみ。
[#天から2字下げ]明治三年|庚午《かのえうま》一一月二七夜、中津|留主居町《るすいまち》の旧宅敗窓の下に記す
[#地から2字上げ]福沢諭吉
底本:「福沢諭吉教育論集」岩波文庫、岩波書店
1991(平成3)年3月18日第1刷発行
底本の親本:「福沢諭吉選集 第9巻」岩波書店
1981(昭和56)年1月26日第1刷発行
初出:「新聞雑誌 第37号付録」
1872(明治5)年3月発行
入力:田中哲郎
校正:noriko saito
2007年2月13日作成
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