謀《はか》り、したがって一国の富強を致すことあらば、なんぞ西洋人の力を恐るるに足らん。道理あるものはこれに交わり、道理なきものはこれを打ち払わんのみ。一身独立して一国独立するとはこのことなり。

   一身独立して一国独立すること

 前条に言えるごとく、国と国とは同等なれども、国中の人民に独立の気力なきときは一国独立の権義を伸ぶること能《あた》わず。その次第三ヵ条あり。
 第一条 独立の気力なき者は国を思うこと深切ならず。
 独立とは自分にて自分の身を支配し他によりすがる心なきを言う。みずから物事の理非を弁別して処置を誤ることなき者は、他人の智恵によらざる独立なり。みずから心身を労して私立の活計をなす者は、他人の財によらざる独立なり。人々この独立の心なくしてただ他人の力によりすがらんとのみせば、全国の人はみな、よりすがる人のみにてこれを引き受くる者はなかるべし。これを譬《たと》えば盲人の行列に手引きなきがごとし、はなはだ不都合ならずや。或る人いわく、「民はこれによらしむべしこれを知らしむべからず、世の中は目くら千人目あき千人なれば、智者上にありて諸民を支配し上の意に従わしめて可《か》
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