と両様の義を備えて人の世話をするときは、真によき世話にて世の中は円《まる》く治まるべし。譬《たと》えば父母の子供におけるがごとく、衣食を与えて保護の世話をすれば、子供は父母の言うことを聞きて指図を受け、親子の間柄に不都合あることなし。また政府にては法律を設けて、国民の生命と面目と私有とを大切に取り扱い、一般の安全を謀《はか》りて保護の世話をなし、人民は政府の命令に従いて指図の世話に戻《もと》ることあらざれば、公私の間|円《まる》く治まるべし。
 ゆえに保護と指図とは両《ふたつ》ながらその至るところをともにし、寸分も境界を誤るべからず。保護の至るところはすなわち指図の及ぶところなり。指図の及ぶところは必ず保護の至るところならざるを得ず。もし然らずしてこの二者の至り及ぶところの度を誤り、わずかに齟齬《そご》することあれば、たちまち不都合を生じて禍《わざわい》の原因となるべし。世間にその例少なからず。けだしその所以は、世の人々常に世話の字の義を誤りて、あるいは保護の意味に解し、あるいは指図の意味に解し、ただ一方にのみ偏して文字のまったき義を尽くすことなく、もって大なる間違いに及びたるなり。

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