現在、身の行状につき必ず不都合なることも多かるべし。その一、二を挙ぐれば、「貧は士の常、尽忠報国」などとて、みだりに百姓の米を食い潰して得意の色をなし、今日に至りて事実に困る者は、舶来の小銃あるを知らずして刀剣を仕入れ、一時の利を得て、残品に後悔するがごとし。和漢の古書のみを研究して西洋日新の学を顧みず、古《いにしえ》を信じて疑わざりし者は、過ぎたる夏の景気を忘れずして冬の差入りに蚊帷《かや》を買い込むがごとし。青年の書生いまだ学問も熟せずしてにわかに小官を求め、一生の間、等外に徘徊《はいかい》するは、半ば仕立てたる衣服を質に入れて流すがごとし。地理、歴史の初歩をも知らず、日用の手紙を書くこともむずかしくして、みだりに高尚の書を読まんとし、開巻五、六葉を見てまた他の書を求むるは、元手なしに商売をはじめて日に業を変ずるがごとし、和漢洋の書を読めども天下国家の形勢を知らず一身一家の生計にも苦しむ者は、算盤《そろばん》を持たずして万屋《よろずや》の商売をなすがごとし。
天下を治むるを知りて身を修むるを知らざる者は、隣家の帳合いに助言して自家に盗賊の入るを知らざるがごとし。口に流行の日新を唱
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