今、世の識者に民選議院の説あり、また出版自由の論あり。その得失はしばらく擱《お》き、もともとこの論説の起こる所以を尋ぬるに、識者の所以はけだし今の日本国中をして古《いにしえ》の御殿のごとくならしめず、今の人民をして古の御殿女中のごとくならしめず、怨望に易《か》うるに活動をもってし、嫉妬の念を絶ちて相競うの勇気を励まし、禍福譏誉ことごとくみな自力をもってこれを取り、満天下の人をして自業自得ならしめんとするの趣意なるべし。
人民の言路を塞《ふさ》ぎ、その業作を妨ぐるは、もっぱら政府上に関して、にわかにこれを聞けば、ただ政治に限りたる病のごとくなれども、この病は必ずしも政府のみに流行するものにあらず、人民の間にも行なわれて、毒を流すこともっともはなはだしきものなれば、政治のみを改革するもその源《みなもと》を除くべきにあらず。今また数言を巻末に付し、政府のほかにつきてこれを論ずべし。
元来人の性は交わりを好むものなれども、習慣によればかえってこれを嫌うに至るべし。世に変人奇物とて、ことさらに山村|僻邑《へきゆう》におり世の交際を避くる者あり。これを隠者と名づく。あるいは真の隠者にあらざ
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