の七重の峰と対ひ咲く榛名の山の山吹の花
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 これは峠から湖の方に半ば下つた傾斜面に咲いてゐた山吹の花であらう。この歌などは「調べ」がその生命であつて、そこから山吹の花の黄いろい情緒が僅に空中に発散するのである。かういふ歌特有の持味は字余りや口語歌では決して出て来ない。人間生活が伝統の鎖の一小環であると同様、日本歌の伝統も俄に断ち切るわけには行かぬ。

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娘にて倉の板敷踏みたるにまさり冷き奥山の路
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 聯想といふか錯覚といふかとても面白い聯想である。こんな聯想、錯覚が浮ぶ丈でその人は既に立派な詩人だと私は思ふ。現に私などにはめつたに浮ばない。それを凡人といひ、浮ぶ人を非凡人といふ。非凡人の数は極めて少いのだから珍重されなければならない。早春の奥山の路の冷さは非凡人の感覚を通して初めて味はふことが出来る。非凡人あるが故に凡人の精神生活はかうして豊かになるのである。

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舟の人唄を唄へばいと寒き夢かと思ふ湖畔亭かな
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 わかさぎ釣の舟でもあらう、舟の男が唄を唄ひ出したので
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