自覚した機会を美しく平叙するだけで少しも誇つてはゐない。
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夕焼の紅の雲限り無く乱るる中の美くしき月
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西妙高から初まつて東信越の山々に終る大きな夏の空には真赤な夕焼雲が絵具皿の絵具のやうに散らかつてゐる。その雲の間に白い夕月がちんと収つてゐる。山の様子が少しも示されてないので唯の天球の歌と見るより仕方がないが実はさういふ環境で作られたものである。
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長持の蓋の上にて物読めば倉の窗より秋風ぞ吹く
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堺の駿河屋の土蔵の中で更科日記か何か取り出して読んでゐる町娘の姿が浮んで来た。それは正しく自分である。倉の窓からは初秋風が涼しく吹き込んでゐた、丁度今日の様に。
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深山鳥|朝《あした》の虫の音《ね》にまじり鳴ける方より君帰りきぬ
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郭公がしきりに啼くのでどの辺だらうかとその方角を尋ねて居ると暁の露を踏んで早くから散歩に出た良人が、丁度その声のする方から帰つて来た。個中の消息誰か之を知らんといふ訳であらう。
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古里の
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