の唯事の唯ならぬ[#「唯ならぬ」は底本では「唯よらぬ」]世も我ありしかな
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 誰でも若い内は物思ひ位はするだらう、そんなことは何でもない唯事に過ぎない。しかし私の場合にはその唯事が唯事でなくなる様な非常事態もよく起つたものだと今はすつかり学者になりすましたありし日の情熱詩人が静かに往時を囘顧するものであらう。

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後の世を無しとする身もこの世にてまたあり得ざる幻を描く
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 既成宗教を信じない作者は来世を信ずることはない。それなのにこの世であり得ざる幻を描いて喜んだり悲しんだりしてゐる。それは凡愚の迷信にも劣る愚かしさであるがどうにもならない。

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死ぬ日にも四五日前の夢とのみ懐しき儘思ふあらまし
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 この堪らない懐しさ私は忘れないであらう、例へば死ぬ時が来ても四五日前に見た夢のやうに思ひ浮べることであらう。旅の歌が作の全部となつた頃僅に見出される純抒情詩で縹渺たる趣きはあるが中味の捕へようのないものが多い。

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山桜夢の隣りに建てられし真白き家
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